2019/04/10

京極朋彦 / 永田桃子 ソロダンス ダブルビル公演によせて

https://www.facebook.com/events/849019145441726/
画像をクリックすると公演詳細ページにとびます。
 
久しぶりに東京で自作を発表します!

昨年、神戸で初演したソロダンスです。
この作品は2017年に韓国に滞在した時に、現地の伝統舞踊に強く影響を受けて作り始めた作品でした。
それがなんと今年、再び韓国で、現地の伝統舞踊のダンサーと共に滞在制作を行い、デュエット作品に発展させるプロジェクトが動き出しました!

そんなタイミングもあって、今回もう一度、この作品を自分でしっかり踊っておきたいと思いました。
しかも東京ではまだ発表していない作品だったので、移住してから一年半のご挨拶も含めて、東京のお客さんにも見てもらってから、自信を持って韓国に行こう!ということで今回の企画を立てました。
そして以前から気になっていた、とても素敵な場所、カフェ ムリウイさんで公演を実現できることになり、とても嬉しく思っています。

そして何より、今回一番嬉しいのは、永田桃子さんとダブルビル公演をすることになったことです。

彼女は、年の差はあれど、気心の知れた友人であり、私が今「大人げなく本気で挑みたい相手」でもあります。

永田さんとは2年前、梅田宏明 主催 SomaticField Projectで出会い、今まで何度か共演やイベントのゲストとして、ご一緒させていただきましたが、その才能は素晴らしく、おそらく長くは日本に留まらないだろうと思っていたので、このタイミングでご一緒できて本当に嬉しいです。

そしてもう一つ嬉しいことは、彼女が今回、習作として踊るソロダンスのタイトル『喪服を洗う女』は、私が今年2月に開催した「踊る体の写生会 vol.8」で彼女が即興で踊った踊りに、私がその場でポロッと口にした言葉がそのまま使われていることです。

「そのタイトルでソロダンスが作りたいです。」

その時すぐに永田さんがものすごく「まっすぐ」に言ってくれたのを、私は鮮明に覚えていて、それが今回の企画の始まりでした。
今思えば私は、その時、単純に嬉しい気持ちと同時に、彼女の「まっすぐさ」に10年前の自分を思い出していたのかもしれません。

10年前。24、5歳の時。
私は、お金もなければ、場所もない、技術も見せ方も、とっ散らかっていたけれど、ただただ作品を世に送り出したい一心でした。
粗削りだけど「ダンスにまっすぐ」だった10年前。
今の私も、果たして当時と同じようにダンスに「まっすぐ」でいられているだろうか?
あまりにも「まっすぐ」な永田さんを見て、おじさんはハッとしたのでした。

そしてこれも後から気が付いたのですが、10年前、私がソロダンス『カイロー』を作った時と、今の永田さんはちょうど同じ年齢でした。
(念のため言っておくと10年前の私と、今の永田さんは比べ物にならないぐらい技術も精神も永田さんが上!!)

偉そうなことは言えないのですが、若い頃の「まっすぐさ」でしか作れない作品というものが、この世にはあって、永田さんの今回の作品が、ここからどんどん発展していけば嬉しいなという思いもあって、今回の企画を進めています。

少し話はズレますが、東京には若手育成事業やコンペティション、助成金や劇場、そして様々な情報が溢れています。
私が20代前半の頃よりもそれらは多く、手厚くなっているはずです。それは数々の先輩たちが切り開いてくれた財産です。
しかし、今の若いダンサーにとってこの状況が実は逆に「ダンスにまっすぐ」でいることを難しくしていないだろうか?と思うことが最近あります。

もちろんサポートや環境の整備は重要な社会課題ですし、若手育成事業そのものを否定するわけではありません。わたしもその恩恵にあずかってきたうちの一人でもあります。

しかし若いアーティストが何かに出会って、その衝動をそのまま作品にするまでに、必要なものが用意されすぎているのも、逆にやりづらさもあるのではないか?
そんなことを、東京を離れて移住してから特に、よく思うようになりました。

そんなことを思っていた矢先、話を今回の企画に戻すと、そういったあれこれを吹っ飛ばすようなストレートさで作品に向かおうとしている永田さんを見て、私は「かつての自分」あるいは「アーティストの原型」に出会ったような気がして、とても勇気づけられたのと同時に、自分もそうありたいと思いました。そして、まっすぐにダンスと向き合う彼女と、ただただ同じ土俵に立ってみたい。立たせてください!という思いが沸き起こりました。

今回の永田さんのソロは始まったばかりの習作です。
これから長い時間をかけて育っていく新芽です。やがてすぐに大木になると思いますが。。。

そして私のソロは過ぎてしまった「まっすぐな時期」を超えて、まだなんと名付けたらいいのかわからないのですが「第二期」に突入した感のある作品な、気がします。。。
この遅咲きの芽も、隣国、韓国に根を張り、やがて二つの国を繋ぐ「蔦」のように成長してくれればと思っています。

おそらく今後も何らかの形で、彼女のソロダンスは発展していくことと思います。私が韓国から帰ったタイミングで、また何かしら発表の場を設けるかもしれません。が!

今の二人のダンスは今しか見られません!!

新緑の季節、平日の夜ですが、ぜひ二人のダンスを見に、会場に足をお運び頂けたらと思います。
美味しいドリンクと気持ちのよい空間、ダンスを肴にゆっくり話しましょう。

詳細情報はNEWS欄あるいはフェイスブックイベントページ京極朋彦 / 永田桃子 ソロダンス ダブルビル公演をご覧ください。

皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

京極朋彦
京極朋彦ソロダンス『DUAL』初演より 撮影:Jyunpei Iwamoto