2012/01/27

木ノ下歌舞伎『三番叟』誕生秘話と、その後の話


さて、木ノ下歌舞伎の三番叟が三年ぶりに再演されます。

今日は三年前と変わらず、今回も衣裳を担当してくれる清川さんと衣裳の買い出しに行きました。

彼女は三番叟の初演の時に出会って以降、僕の作品の衣裳をほとんどお任せしている、造形大の後輩です。

そんな彼女と話していると三番叟初演当時のエピソードが出るわ出るわ!ってことで今日は少し三番叟初演の時のことを書いてみようと思います。

初演は2008年5月に、京都アトリエ劇研、8月に、こまばアゴラ劇場でした。
三番叟は、能や歌舞伎の役者が、儀式としておこない、元来、観客に見せるものではない舞踊です。さらにその起源は曖昧で、もはや祝祭舞踊ということで「意味がない」とされている不思議な舞踊でもあります。

そんなものを当時、四半世紀も生きていない自分たちが、どう扱ってよいものやらということで、稽古初日にして、息づまったのを覚えています。

ともあれその後、木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下君と共に、三番叟の歴史を学んだり、能、狂言、歌舞伎の映像を見たり、実際、歌舞伎座で三番叟を見たり、狂言師を招いて狂言の振付を教わったりと、かなり真面目にインプットをしてから作業に入りました。

初めはダンサーだけで30分ほどの作品を作りました。演出の杉原邦生氏とは、僕が役者をしていた頃から着かず離れず、かれこれ10年弱の付き合いになりますが(初演当時は一年ぶりぐらいに作品をご一緒しました)大体ダンス作品の場合、出演者に作らせて、後から爆弾を持ってきて爆発させて、その破片を再構成して作るという心臓に悪い作り方をします(苦笑)

「自転車乗ってください」とか「単管で組んだ足場の上で踊ってください」とかいう無茶ぶりが平気で炸裂するのが杉原邦生の現場です。
当時もそんなわけで様々な、むちゃくちゃな美術プランが持ち上がり、その時ちょうど邦生さんが「コンテンポラリーダンスの無音の時間って眠くね?」みたいな話から「30分間テクノかけっぱなし案」も出て来たように思います。

こうやって書くと、邦生さんは、もうただのヤンキー演出家みたいになってしまいますが、実は綿密な計算のもと、これを実現させてきたのも彼の力でもあります。
そこらへんは信頼と実績があればこそ、まわりもついて来るということで、フォローになったでしょうか?(一応、先輩なんでね)

そんなこんなで清川の話に戻ると、初演の時、彼女は大学3年生。衣裳志望とはいえ、本格的な服作りのスキルもなく、しかもヤンキー演出家は意外とA型気質なので、本当に大変で、泣きながら衣裳を作っていたのを覚えています。
楽屋で毎回汗だくになって帰ってくる衣裳を洗濯し、ドライヤーで必死に乾かしながら、涙が衣裳に落ちるので「目にドライヤー当てた方がいいんちゃう?」みたいなやり取りをして笑い合ったおぼえがあります。

そして一番の思い出は、初演の小屋入り中に衣裳の大幅な変更が生じ、ダンサー三人と邦生さんと清川でタクシーに飛び乗って、雨の四条に買い出しに行ったことです。あのときは時間もないし雨も降ってたし、全員がアドレナリン全開で、ユニクロやら、古着屋やらをかけずり回ました。
今でも当時のことが鮮やかに思い出せるぐらいです。

そして東京、こまばアゴラ劇場での本番。三番叟が終わって暗転した瞬間、湧きあがるような拍手をもらったのもアゴラが初めてでした。

今考えれば当時は本当にみんながむしゃらで、むちゃくちゃやったけど、本当にいい思い出です。

そんな初演を終えて、杉原邦生氏は、アゴラ劇場のサミットディレクターに抜擢され、僕は邦生さんの「コンテンポラリーダンスの無音の時間って眠くね?」に対抗すべく、無音30分のソロダンスを作ります。

それが、その後、京極朋彦ソロダンス企画『カイロー』の原型となり、2010年には同じアゴラ劇場、夏のサミットにて上演されることとなるのです。

そして清川は大学卒業後、本格的に衣裳の勉強をするべく働きながら夜間の服飾学校に通うようになります。
そしてダンサーの芦谷さんはユニクロで働くようになります(これは関係ないと思うけど笑)

つまりは三番叟は当時作品に関わった人達ににとって、何らかの転機となった作品でもあるのです。それだけみんな真剣だったし、楽しかったし、それぞれがそれぞれに必死に何かを見つけていった、そんな公演でした。

そしてあれから三年、ダンサーは一人変わりましたが、ほぼ同じメンバーでの再演が実現しました。当時の衣裳、金色の足袋は白足袋をスプレーで塗っていたものですが、今回は足袋をばらして金の布をあてがったものが、稽古場にやってきました。

僕はそれを見た時、初演を終えた時に清川が「自分に技術が無くてくやしい」と口にしたこと思い出して、涙が出そうになりました。あの時の悔しさをしっかりと力に変えて来た清川。
自分は三年前と比べてどうか?そんなことを顧みる気分になりました。

今日、一緒に衣裳の買い出しをしに行って、結局いいもんが無く、また後日再捜索になりましたが、必ずいい仕事をしてくれるという信頼があるので、何も心配していません。
また小屋入り中にタクシー乗ることになっても、こいつのこだわりのためなら、いくらでも付き合えるし、こいつの衣裳に似合うだけの踊りを見せたろ。ってことで、気合も入ります。

本当に大学を卒業してから一番と言っていいほど、その後の創作活動に影響を与えたこの作品の再演をぜひ、多くの人に見て頂きたいと思っています。しかも今回京都では三番叟があったからこそ生まれた無音のソロダンス『カイロー』も同時期上演されます。なんだか運命的なものを感じます。

今回の再演がまた、メンバーにとっての良き転機になるよう願っています。関東圏の方は横浜にて、関西圏の方は京都にて、お会いできるのを楽しみにしております。

◆TPAM DIRECTION PLUS 木ノ下歌舞伎 舞踊公演『三番叟/娘道成寺』

2月17日(金)20:00、18日(土)15:00、19日(日)18:00、20日(月)14:00/18:00
@のげシャーレ(横浜にぎわい座)

料金:一般 \2,800/学生 \2,300 TPAMパス特典:\1,000
主催:木ノ下歌舞伎
共催:坂上がりスカラシップ

PERFORMING ARTS AIR MEETING & SHOWCASE in kyoto
舞台芸術AIRミーテイング@TPAM&ショーケース in kyoto


京極朋彦ソロダンス『カイロー』 木ノ下歌舞伎 『三番叟』 連続上演!!

『カイロー』 2月21日(火)19:00
『三番叟』 2月22日(水)18:30

@京都芸術センター 講堂

問い合わせ http://air-kyoto.com/





2012/01/18

京極朋彦ソロダンス『カイロー』木ノ下歌舞伎 『三番叟』 連続上演!!

とうとう憧れの京都芸術センターにて、京極朋彦ソロダンス『カイロー』が上演されることになりました。
さらに、木ノ下歌舞伎『三番叟』も連続上演されます=体力の限界です!

2006年、山田せつ子ダンスシリーズ『奇妙な孤独』出演時から、芸術センターで自分の作品を上演することに、本当に、本当にあこがれ続けてきました。

あれから6年、本当に本当に嬉しいです。しかも、再演でパワーアップした『三番叟』と共に!
ぜひ、京都にいる方も、そうでない方も、この二夜連続上演をお見逃しなく!!
(男肉 du Soleilさん、川崎歩さんの作品も上演されます!!)

PERFORMING ARTS AIR MEETING & SHOWCASE in kyoto
舞台芸術AIRミーテイング@TPAM&ショーケース in kyoto

京極朋彦ソロダンス『カイロー』 木ノ下歌舞伎 『三番叟』 連続上演!!

『カイロー』 2月21日(火)19:00(
男肉 du Soleil 『男肉~we are the world』と同時上演l
『三番叟』 2月22日(水)18:30(川崎歩『ぶらウン之助』と同時上演)

@京都芸術センター 講堂
問い合わせ http://air-kyoto.com/

2012/01/14

木ノ下歌舞伎『三番叟/娘道成寺』予約受付開始!

出た!懐かしの紅白幕!
ってことで年明けから、木ノ下歌舞伎『三番叟』のリハーサルが始まっております!

初演は三年前。この作品をきっかけに演出の杉原邦生氏は、こまばアゴラ劇場のサミットディレクターになり、僕は東京で作品を上演するようになった、僕らにとってまさに、転機となった作品です。

今回は新たに新キャストを迎え、新たな新生三番叟をお送りする予定です!!
昨日は木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下先生による歌舞伎レクチャーがありました。三番叟の構造から歴史まで、三年前の復習と、新たな発見を含めた先生のレクチャーは本当にためになります!


祝祭舞踊として、形式的な上演が多い三番叟について、ここまで考えて再創造しようとしてる人達はいないのではないでしょうか?新たな解釈と新メンバー、新振付でお送りする木ノ下歌舞伎『三番叟』は、きたまりによる『娘道成寺』と同時上演で2月17日~20日、横浜、のげシャーレにて!

そして本日チケット予約開始です!!こちらを要チェック!!→http://kinoshita-kabuki.org/