振付家、団体紹介も三組目。
今日は山口から参加の集団:歩行訓練、谷 竜一さんを紹介させていただきます!
集団:歩行訓練、谷 竜一さんと初めて会ったのは、私がTPAM
in Yokohama 2011で、ソロダンス『カイロー』を上演した時のアフターパーティーだったと思います。
海外のディレクターや東京、横浜界隈の舞台関係者が多い中で、お互いに地方から参加した者同士、肩を寄せ合ったというか、話があったというか、同じ地方で、同い年で頑張っている仲間がいるという事が、お互いに嬉しかったという思い出があります。
そんな矢先、集団:歩行訓練はFESTIVAL TOKYO 2012の公募プログラムに選出され、実際に僕も池袋に公演を見に行きました。
その公演は演劇を使って演劇を批評していくような作品で、あくまでその表現方法は“演劇的”なものでした。私自身も彼らは“演劇を作る集団”だと思っていました。
ところが今回、彼らは“ダンス”を作ると言い始めました。正直、彼らのダンス作品を見たことがなかったし、果たして彼らにKYOTO DANCE CREATIONに参加してもらうという事が、どういうことなのか?プロデューサーとして悩みました。
しかし谷さんが「ダンスを作る」と表明したこと、送られてきたリハーサル映像を見て、私は「自分の知らないダンスの生成方法が見られるかもしれない」と思ったのです。
実際、送られてきた映像を見て、選考委員会のメンバーからは「これはダンスではない」という意見が出たり「ダンサーの体が硬い」という指摘が出たのは事実です。しかし私は映像を見た時点でダンサーの中村洋介さんが基礎のしっかりとした踊れるダンサーであることは一目でわかったし、そのぎこちない体の所以が強固なコンセプトによるものだという事は、容易に想像がつきました。
私は谷さんのF/Tでの作品『不変の価値』を見たときに「谷さんの強固なコンセプトに役者が追い付いていない」と感じていました。
だからこそ今回送られてきた映像に映る、中村洋介さんの体を見た時に「これは谷さんと対等に戦える体が見えそうだ」と思ったのです。
彼のFTでの作品を見ていなければ、今回、参加していただくことには、ならなかったかもしれません。しかしそれは山口を越えて、全国に作品を届けようという谷さんの理念と意気込みの勝利であり、力なのだと思います。
だから実際山口に行って、リハーサルを見ることを、私は本当に楽しみにしていました。
実際、彼らが拠点とするスタジオイマイチはオーナーの自宅兼、宿泊施設兼、稽古場兼、イベントスペースという素晴らしい場所で、なるほど、ここで生まれる作品のクオリティーはここが支えているのかと思うと納得がいきました。さらにここに滞在して実感した事は、谷 竜一という作家が作品にかける情熱と、それを支える仲間たちの存在でした。
とにかく谷さんはダンサーが感覚的に、あるいは過去の経験から生み出していくような“振付”というものを、ずいぶん遠回りして、こねくり回して、論理的かつ分析的に生み出していきます。
それには恐ろしい時間がかかります。なんとなく作った振りをダンスのセオリーにのせて展開していけば、5分、10分ですぐに出来てしまうようなことを5時間、10時間かけて徹底的に構築していく。納得いかなければ何度でもやる。それが彼の“振付”です。今回のコンセプトである「地図をつくる」という事について毎日そのコンセプトをダンサーに5分間、喋らせ、それを毎日録画し、そこで語られた言葉をピックアップし、それらをフレーズに分けて、一つ一つに振付をあてて、再びそれを喋らせ、録画し、、、という気がふれるような作業の果てに、全く関係ない振りがぽろっとこぼれ出る。最終的にそれが採用されたりする。というような果てしない作業が稽古場では延々繰り返されていました。
彼の稽古場は画家、あるいは彫刻家のアトリエのようです。果てしなく書き直し、削り取り、また重ねて、何かが立ち上がっていく。その傍らで無造作に散らばった絵具や木くず。不意に窓から、その行為と結果すべてに、等しく光が降り注ぐような瞬間を、その瞬間だけを待ちわびている男のいるアトリエ。まあいいように言えば。
悪く言えば「小難しいことやってんなぁ谷くんは。」といった感じ。
そしてそれらの要求全てを受け入れ、実現して見せる中村さんの凄さと、いい距離感でそこに立ち会うミュージシャンの古富 努さん。この三人の三角関係が図形の証明のように場を立証していきます。しかしその定理は意外とポップだったりして。
実際、今の時点で作品がどんな形で京都に届くのか、4組中、最も謎なのがこの組です。もしかしたら全然、期待外れかもしれない。しかし私は彼の作品を作る姿勢と、その作品がいかにして作られているかも含め、京都に持ってくる意味があると思っています。
今回京都公募にほとんど応募がなかった事に対して、他の地方から同年代が作品を持ってやってくるという事が、京都をもっと面白くすると信じていますし、彼らを見て京都の同年代に火がつけばと考えています。
実際、こうして実際に彼らのリハーサルを見ることで、私自身が一番火がついているのも事実です。
実際、制作環境的には山口には京都ほど情報もなければ、場所もありません。
そんな中で、全国に向けて、あるいは世界に向けて発信していこうとしている人がいるという事に私は勇気をもらうし、尊敬の念を持ちます。
そして互いの作品をケチョンケチョンに批判しあったり、競争し合ったりしたい。集団:歩行訓練の「:」は常に半角表記にしてくれと、谷さんは言います。
そんな細かいこといいじゃないと思うかもしれませんが、そこが谷クオリティーなのです。私は今回、本当にいい競争相手と巡り合いました。
ぜひ彼らのパフォーマンスを劇場に観に来ていただきたい。心からそう思います。
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